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鳥居民『原爆を投下するまで日本を降伏させるな トルーマンとバーンズの陰謀』草思社、2005年。

要約

なぜ、アメリカは日本に原爆を投下したのか。

戦後、トルーマンやスティムソンが説明した理由は次の2つである。①「百万人のアメリカ兵の生命を救うために、原爆を投下した」②「鈴木貫太郎が『ポツダム宣言』を無視するといった意味合いで、宣言を『黙殺』すると語った」。

それでは、先行研究ではアメリカの原爆投下に対してどのように説明されているのか。先行研究では、これらトルーマンやスティムソンが戦後に述べた説明をそのまま用い、「憶測や想像を叙述するだけ」となっている。というのは、トルーマンらの説明をそのまま受取ることに次の二点において矛盾があるからである。

①「原爆を投下する前の四ヶ月のあいだ、日本本土上陸作戦で予想される犠牲者の数に懸念を表明する陸軍軍人はいなかった。(中略)アメリカの軍首脳がだれひとり論じることもなければ、考えもしなかった百万人の犠牲者という数字が登場したのは、戦後になってから」(p8)

②「トルーマンとかれの協力者のバーンズがポツダム宣言を公表するにあたって、日本が降伏しないように入念な細工をほどこし、陸軍長官のスティムソンの原案から天皇の地位保全の条項を削ってしまったという事実である。さらに、日本側をしてその宣言が正式の外交文書だと思わせないようにつくり、最終通告だという認識を持たせないように最新の注意を払い、日本側が間違いなく黙殺するように仕組んだ」(〃)

よって、本書では次の仮説をたて論証していく。

「アメリカ大統領ハリー・トルーマンと国務長官ジェームズ・バーンズの二人は、原爆の威力を実証するために手持ちの二発の原爆を日本の二つの都市に投下し終えるまで日本を降伏させなかった」(p7)

以下、本書では、ルーズヴェルトの死によって突然大統領となったトルーマンが、原爆の開発という莫大な予算をかけた遺産を引き継ぎ、自らの威信を高めるため原爆投下を準備していたことが描かれる。

コメント(批判点と意義)

本書は、「だったろう」「なはずである」等の記述が多く、史料の裏づけが少し乏しいように思える。ただこれは、著者も次に書いているように、史料が公開されていないからである。

「トルーマンが新大統領となり、国務長官のバーンズがかれの新たな協力者となって、日本の二つの都市に二発の原爆を投下するまでの四ヶ月足らずのあいだ、この二人のあいだの論議はなにひとつ明らかにされることなく、二人が決めたことはなにも文字として残されていない。そこで私の主張のある部分は推測を繋げることにならざるをえない。」(p7)

しかし、本書は非常に説得的な論を展開している。それは、トルーマンがソ連の日本参戦の期日を非常に気にしていた、グルーやスティムソンが日本を降伏させるため行なう提言にトルーマンが曖昧な態度を取っていた、等、戦後トルーマンが述べた説明から矛盾する事実や、彼を取り巻いていた状況が非常にシンプルに描かれているからであるように思う。

よって、トルーマンは自ら立てた原爆投下までに踏まねばならない予定表(ソ連の日本への参戦、アメリカが日本に対し降伏を求める宣言を出す期日等)をたてており、それが狂わぬよう入念に操作していた、という説明が、トルーマンとバーンズが、実際何を議論し、何を思っていたのか、などの史料がなくとも、アメリカが日本に原爆投下をしたのはなぜか、という問いに対し納得できる回答を提示しているように考える。

*人物説明*

鳥居民氏

1929年、東京生まれ、横浜に育つ。日本および中国金現代史研究家。夥しい資料を渉猟し、徹底した調査、考察をもとに独自の史観を展開。」

(本書、作者のプロフィールより引用)

ハリー・トルーマン(1884-1972)

1945年4月12日、第33代アメリカ大統領に就任。ルーズベルト大統領の死で、大統領に昇格する。日本への原爆投下を決定。

ジェームズ・バーンズ(1879-1972)

1945年7月3日~1947年1月21日まで、トルーマン政権下において国務長官を務める。

ヘンリー・スティムソン(1867-1950)

国務長官、陸軍長官を務める。本書での時期には、陸軍長官。

ジョゼフ・グルー(1880-1965)

1932年6月~1942年6月、駐日アメリカ大使を務める。1944年5月、アメリカ国務省極東問題局長就任。

以上、本書中の解説とともに、以下の文献を参照した。

外務省外交資料館日本外交史辞典編纂委員会『新版日本外交史辞典』山川出版社、1992年。

(間戸安奈3)

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