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2008年4月20日号

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皆さん今日は。

「特任教授・OB教授の研究室」は、学生、大学院生、卒業生のサロンです。

本が送られたり、出入りしている者が見つけた本を廻し読みして感想を語り合っています。

今日は、間戸安奈さんに鳥居民『『反日』で生きのびる中国 江沢民の戦争』(草思社、2004年)を読んで貰い、感想文を書いて頂きました。

私は鳥居民さんの文章に魅かれ、ファンですが、鳥居民さんは、もっと大勢の人々に読まれるべき人だと考えています。

戸山三郎

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鳥居民『『反日』で生きのびる中国 江沢民の戦争』(草思社、2004年)

 中国は、言うまでもなく、日本にとって最も大切な国の一つであり、日本は、中国という巨大な隣国との関係を友好なものとして築いていく必要がある。しかしながら、日本に対する中国の国民感情は、昨今度重なる反日デモに見られるように、よいものであるとは言えない。このことは、一見、日本と中国の過去の不幸を考えれば、致し方ない結果のように思える。

本書では、しかし、このような未だ根強く残る中国国民の日本への憎しみの感情は、江沢民によって中国共産党一党独裁体制を維持するために政治的に意図された政策の結果なのである、とする。そして、毛沢東、鄧小平、江沢民という歴代中国指導者の下で、中国国民に体制の正統性を植え付けるために用いてきた中国政府の政治思想工作史ともいえるものを、中国内外での中国歴代指導層の言動や具体的政策の動向と、当時中国に駐在していたジャーナリストや中国と関係深かった日本の政治家の言説など多くの資料からたくみに描き出し、中国政府の政策と中国国民の日本に対する敵対心との関係性を明らかにする。

政治思想工作は、毛沢東の「三面紅旗」運動の結果、二千万人以上にのぼる餓死者を生むなど、大惨禍を招く失敗によって、失墜した党の権威を回復するため、考え出された「両憶三査」教育運動が原型になる。この教育運動で、民衆は「階級苦」や「民族苦」を思い起こさせることが重要であると教育され、特に「階級苦」が重要視された。鄧小平の時代になると、「改革・解放」政策を進める中、「階級苦」は捨て去られ「民族苦」がその統治に用いられるようになる。鄧小平の後に党総書記となった江沢民は、中国共産党は中華民族の前衛党であると唱え、国民に共産党は中国社会の凝集力であるとたたき込むために、「愛国主義教育実施綱要」第二十八条を実施する。そして、この党を統治するために用いられた「愛国主義教育実施綱要」や反日キャンペーンといった「民族苦」の強調が、現在に至るまで、中国国民の日本に対する敵対心を決定的に植え付けることになった。

また本書では、1996年6月に『朝日新聞』において『ニューヨークタイムズ』の記者ニコラス・クリストフが語った次の文言が度々引用される。「中国人の大多数が抱く日本に対する敵意に、大部分の日本人がほとんど気付いていないことに、私は衝撃を受けている」これは、クリストフ氏が中国での反日キャンペーンを認識し、日本国民への警告として語ったものである。本書で度々強調、批判されるのは、クリストフが問題とし発言するのとは対照的に日本の外務省、政府、研究者などが日中関係の将来に影響を及ぼす反日キャンペーンを問題とするどころか、ほとんど取り上げるものがいなかったという事実である。著者は「不思議なことだった」と、日本の有識者達の当時の言論を取り上げる。

冒頭で述べたが、日本と中国との関係は将来的にも政治的、経済的、地理的に非常に重要な関係であることは誰も疑わないだろう。しかし、現在の両国国民の相互イメージは悪く、このことは、日中関係の将来を暗澹としたものとしているように思う。その最大の原因に、歴史認識や感情の問題がある。その消すことのできない大きな傷が、中国共産党支配体制の正統性を維持するために利用され、さらに傷口を広げられているのならば、両国の将来にとって非常に不幸なことである。

本書が明らかにしたことは、根強い中国国民の反日感情が中国政府の政策によるとして、両国の緊張をあおるかのような結論である。しかし、この作業によって明らかにされたことは、両国の相互理解を深め、両国の関係を将来に向け建設的なものとして築いていくために考慮してみるべき問題提起をまた多く示唆するように考える。(間戸安奈)

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